2014-2015 winter

冬を飾る嵯峨野の竹林

写真・文:水野秀比古

嵯峨野の竹林で、愛宕おろしが描いた雪帽子を愛でる。嵯峨野から乙訓までの西山一帯は良質な筍の産地として名高く、丹念に手入れされ整えられた竹林は、京都を代表する風景美のひとつ。愛宕山から北風が嵯峨野の竹林に吹き付け、雪が三角帽子のように竹の節に積もる。早朝、その可愛らしい造形に出会うことが、冬の嵯峨野散策の醍醐味である。

雪化粧まとう貴船神社

写真・文:水野秀比古

静謐な冷気に満ちた境内が、幻想的な雪化粧をまとう。貴船神社は降雪が多く、雪景色の名所でもある。日が落ち、宵闇が深まるにつれ、石段の参道の両脇に灯る春日燈籠が、周囲に降り積もった雪を明るく浮かび上がらせる。青みを帯びた夜の色合いに灯籠の暖かい光が融合する。そのわずか十数分の間だけ現れる絶景見たさに、何度も足を運んでしまう。

2014 autumn

緋色に染まる禅の寺・鹿王院

写真・文:水野克比古

深閑で素朴な禅の寺を彩る華麗な夢空間 室町幕府三代将軍・足利義満が建立した鹿王院。ささやかな佇まいの山門を入り、長く続く石畳の参道を静かに歩む。晩秋の朝、平素は深閑な禅林のカエデ波木が緋色の錦衣を纏って、華麗な夢空間へといざなう。枝いっぱいのモミジ葉が朝の光に輝いている。

タカオカエデの呼び名も持つ紅葉の名所・神護寺

写真・文:水野克比古

延々とつづく紅く染まる参道を登ると錦繍の境内は、息をのむ美しさ 平安遷都の功労者・和気清麻呂が開創した寺院。カエデ樹の中で一番紅葉の美しいイロハモミジは、神護寺の山号・高雄山の名をとってタカオカエデとも呼ばれ、日本随一の紅葉名所と言っても過言ではない。京都のカエデ紅葉は、当寺から始まり、里へ、そして洛中へと駆け下りてゆく。

激動の時代を偲ぶ淀殿と江姫ゆかりの養源院

写真・文:水野克比古

数奇な人生をも和ましたであろう参道一面に散らしたカエデの絨毯 養源院は、豊臣秀吉の側室・淀殿と、妹の徳川秀忠夫人・江姫ゆかりの寺院。秋雨の朝、山門をくぐり、石畳みの参道を歩むと、深紅のカエデが葉を一面に散らしている。激動の時代を生きた両姫の華やかで、また悲しい人生の面影をしのびながら、本堂へ向かう。

2014 summer

今宮神社の境内に緑を添えるトウカエデ

写真・文:水野秀比古

「炙り餅の香りと清涼感溢れる 緑につつまれ、悪疫退散を祈願する」名物「あぶり餅」の老舗二店が向かい合う参道を歩み、おいでやすの掛け声や炭火で炙られた餅の芳ばしい香りに惹かれながら東門をくぐる。出迎えてくれたのは、トウカエデの大木である。爽やかな木々の緑に満ちた境内は清涼感に溢れ、神橋や楼門の朱色が一際映える。さあ参拝を済ませてこの橋へ戻るまでに、どちらの店へ立ち寄るか悩むとしよう。※ 花期:初夏~初秋

ひしめく蓮が盛夏を告げる勧修寺・氷室池

写真・文:水野秀比古

「蓮の花開き、浄土の世界に手を合わす」京都市山科区の門跡寺院・勧修寺では氷室池を中心とした庭園が広がり、初夏から黄菖蒲・杜若・花菖蒲・紫陽花などが次々と咲き誇る。祇園囃子が聞こえ出す頃には蓮の花が開き、宮中に氷を献上したという池に盛夏の到来が告げられる。細道を奥へと進んで振り返ると、手前の蓮と奥の観音堂が風景として合わさり、さながら極楽浄土の様相を呈している。※ 花期:7月中~8月下旬

百日紅のある夏景色。雨模様の法観寺・八坂の塔

写真・文:水野秀比古

「京の風情を醸し出す五重塔が艶っぽく映える夏の日」東大路通から三年坂へ、五重塔を目印に石畳を進む。活気に満ちた街中ながら見晴らし良好な景観美が広がり、道沿いの百日紅が可愛らしい花をつけていた。時折通りかかる人力車、着物姿の女性、托鉢僧、いずれも見事に景色と馴染む。今日は図らずも泣き崩れた空が風景に艶と潤いを与えてくれたが、抜けるような晴天や茜色に染まる夕焼け空もまた見応えがある。※ 花期:8月中旬~9月中旬

2014 spring

紅梅と全国天満宮の総本社北野天満宮絵馬所

写真・文:水野秀比古

「朗らかな早春を告げる北野天満宮の紅梅を愛でる。」御祭神・菅原道真公が愛した梅の花が広大な神域の至るところで咲き乱れ、日本一の梅の花名所として名高い。馥郁たる香りを漂わせる紅梅の向こう側では、絵馬所にかかる三十六歌仙も花見日和を楽しんでおられるようだ。和歌や学問の神様にあやかって一首詠んでみたくなる風情を満喫したい。

東山連峰を借景とした岡崎疏水辺の桜並木

写真・文:水野秀比古

「京の水をたたえる 疏水の花化粧」琵琶湖から引き込まれた疏水は山縣有朋の別邸・無鄰菴の付近で水をたたえ、ゆるやかに鴨川へ向かう。水辺に沿って爛漫と咲く桜に、散策する人たちも朗らかな表情で見入っている。遠景に霞む東山を望みながら、南禅寺界隈の古刹や庭園、美術館など、春風に誘われるまま足を運びたい。

二種類の桜風景を楽しめる高瀬川一之船入

写真・文:水野秀比古

「花の見頃を過ぎても楽しめる 贅沢な花見どころ」豪商・角倉了以が開いた高瀬川。一之船入には高瀬舟が係留されており、名勝天然記念物として国の史蹟に指定されている。かつては伏見に至ったという運河は桜並木が続く。桜見物の最盛期には染井吉野桜が見事に開花し、木屋町通に植栽された柳と相まって春爛漫の風情である。また花見見物が一段落した時期には遅咲きの里桜が咲き出し、水辺は再び華やかな桜色に包まれる。

Katsuhiko Mizuno / Photographer

水野 克比古 | 写真家

1941年、京都市に生まれる。
現在までに京都をテーマにした写真集を165冊も出版し、「京都写真」の第一人者として名高い。日本の伝統文化を深く見つめ、風景・庭園・建築など京都の風物を題材にした撮影に取り組んでいる。生まれ育った京都の自然と文化を深く見つめる写真からは、1200年という歴史の重みが感じられる。2000年には、京都・西陣の町家を修復した水野克比古フォトスペース「町家写真館」を開設。一般公開(要予約)している。日本写真家協会会員、日本写真芸術学会会員。

Hidehiko Mizuno / Photographer

水野 秀比古 | 写真家

1968年、京都市に生まれる。
京都の美しい風景や、歴史・文化の奥深さに魅了され、神社・仏閣を中心とした作品を発表。京都が見せる華々しさや凛とした瞬間、移ろいゆく四季の表情、幽玄の情景を撮り続けている。「水野流京都撮影の手引き」(アスキー・メディアワークス)、「日本人のこころ」(IBCパブリッシング)など多数の写真集があり、京都を代表する写真家の一人として名を馳せる。電子書籍としてiPad・iPhone向け写真集アプリ「京都四季絵巻」もリリースされている。